ソラリス/天野茂典
 
 


 朝まだき
 まだなにも始まっていない線路
 秋の蝶がひかれている
 体調はもうひとつ タバコの吸いすぎで
 気管支が痛い
 きょうはどんないちにちになるのだろう
 みそはぎの花はまだ盛んに紫色にさいている
 十一月の海がみたい
 引き潮と共にぼくのなにかがひいてゆく
 漁師でもないのにたくさんの魚にであう
 みなとではもうセリがはじまっているころだろう
( エベレストからマリアナ海溝までの二万数千キロの距離
 凹凸をならして地球の姿をゼオイドと呼ぶ
 そんな距離は移動できないけれど
 きょうはぼくも歩いてバスや電車にのって
 病院の送迎バスで通うことになるだろう
 毎日は平凡だけどいちにちひとつはなにか
 手ごたえのあるものをつかみたいものだ
 たとえば
 あのソラリスのような
 未来のパンドラの箱を





            2004・11・116

 
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