サーカス/blue
 
空気を裂く鞭の音が
耳の奥に快感を残す
その音に従うのは
野生を忘れたライオン
鼻先にこすりつけられた餌の
血の匂いに抗えず
むなしく光る牙の隙間から
唾液をたれ流す
録音されたテープのように
申し訳程度のうなり声
誰も怖がる者はない

象の足にからみついた鎖は
ぴかぴか光り
フラッシュの度に
足と鼻とを高く掲げる
今にも踏みつぶされそうなニンゲンだけが
象のあいだで
誇らしげに両手をいっぱいに広げる
なぜなら
行ったこともない 海を越えた小さな国に
象たちの病院を建てるためだから

動物臭の中でも
平気でポップコーンをほおばる子どもたち
大人たち
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