Sugar!!/木屋 亞万
 
どこに行くかを決めていなくても
走り出すことはできる
足の動くままに
一歩踏み出すごとに
近づいていく街並み
過ぎゆけば潔く
視界から消えていく風景

足の動きが自動化していく
肋骨の隙間が押し広げられ
肺は絶え間なく膨張していく
呼吸が荒くなればなるほど
気管を行き交う空気が熱く
喉をカラカラ乾かしていく

髪から垂れた汗が頬を伝う
背中のくぼみを汗が流れて
シャツをじっとりと濡らす
肌という肌はすべて
身体を覆う表面から
汗が止まらない

走れば走るほど
空が遠くなることを知る
わずかな風にも
木の梢が揺れることを知る
いくつかの雲が違った速
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