ぽっぷこおん/リンネ
 
いつの顔にぽっかりと穴が開くのだ。それは排水溝だった。わたしは何度も吸い込まれた。わたしはそこで幾度となく溺れた――
 千円札を抜き取ろうとするが、マネキン男の指にしっかりとくっついていて離れない。ぐっと力をこめてひっぱると、男が千円札ごとふわりと持ちあがってしまったわっと手を離すと、吸い上げられるように上昇してそのまま勢いを増して天井でぐしゃりと潰れた。変形したマネキンが天井にはりついて電気光線を放っている。そのまま、さっとインクになって天井へ染み込んだ。
 
 わたしは逃げた。友達のいない廊下を。ゆがんだ眼鏡のせいで、教室も人間も、どうしようもなくねじ曲がって見えるんだ。わたしは教室にい
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