殺人の否定/salco
 
した自己像への供物にでもするのだろう
勝利記憶という栄光は
どんなに卑小であろうと、一過性の記銘に終わらぬ事は
カウンターでくだ巻く小者なんかがよく教えてくれる
あの夏の金メダルの燦然
経験的自己確信の陶酔

無論、人間は社会的政治的動物だ
「殺さずに済む」状況など永劫顕現しはしない
また「殺さない」事が果たして正しいのか
誰にも実証できはしない
それでも殺す側の論理に与する自分でありたくないのなら
手を下せば何ぴとにも修復できない生命の唯一性に
何らかの価値を各々見出して
それを胸に掻き抱いて行くしかないのだ
この殺戮の野に在って、何と貧しく脆い檻か

共食いの
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