お日さま色の猫/yumekyo
 
京の街中に引っ越してきたのは 
師走に入った頃でした 
世間も僕も慌しい頃でした 
東向きのベランダの彼方には 
百年の風雪に耐えてきた 
銀瓦の低い峰々が連なっていました 
午後の北山時雨が止むと 
谷間から小さな陽だまりを目掛けて 
お日さま色の猫が一匹飛び出してきました 
ベランダの僕を見つけて 
お前は何者や とばかりに一瞥を投げかけてきて 
悠然とひなたぼっこを始めるのでした 
肉付きの豊かな猫でした 
葵祭の 次の日に 
ベランダで風に当たっていた僕の前に 
ひょっこりと お日さま色の猫が姿を現しました 
お日さま色の猫は 
すぐ隣にガールフレ
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