郷に住む人/朧月
 
老人施設とは
終着駅のようなものとおもっていたが
通過駅にすぎなかった

口をあけたままの老女も
うつろにみえる老人も
どこかへゆく途中だ
雄々しく背中をふるわせて

幼児にむける
言葉のようなそれを
発しながら介助をする者は
ジャージとタオルに身を包むけど
防ぎきれず空気に染まる

ぜんぶひっくるめて日々を
刻んでゆくのだろう
いちにち いちにちのカウントは
星と同じ無音でやるのだろう

澄みきった朝
施設の門をくぐる
私は時を共にする
長く生きている人と


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