ぼくはいびきをかくらしい/はだいろ
 
ぼくはいびきをかくらしい。
知らなかった。
なぜ、知らなかったかといえば、
ずっと、
ひとりで眠っていたから。


ふたりで眠ってみたら、
ぼくが、夜中に、
なんどもおしっこにいくのを、
おじいちゃんみたいだと彼女が言った。
いびきがうるさいけれど、
波がひいたころに眠れるから、
大丈夫よ。


ゆうべ、夢をみた。
ぼくの遠いむかし、かたおもいした女の子と、
海へ遊びに行く夢だった。
ぼくはうれしさのあまり、
ちょっとかなしくなっていた。


夢からさめると、
となりに彼女が寝息をたてている。
頭をなでると、
ん?って言う。
ぼくはいびきをかくらしい。
ごめんね、でも嬉しい、
ずっとずっと、知らなかったことだから。





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