塔/itukamitaniji
塔
君はまだ
この街の謎に気付いていない
誰かが言った
この街は誰かが見ている夢で
目覚めたら
消えてしまうんだと
途端に
僕の体は透けはじめて
今じゃもう向こう側が見える程
空は剥がれはじめて
その割れ目から
誰かの目玉が
覗き込んでいるのが分かる
逃げて逃げて
走って走って
何処まで行っても
世界は世界なのでした
絶望に追いつかれて
途方にくれて泣いていたんだ
大切な手紙を抱いたまま
誰からもらったのか
もう思い出せないけど
手紙に書いていた言葉
すべてはこわれて
「塔」だけがのこるの
まだ幼い誰かの字
何のことか分からなかったけど
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