ガルシン わたしの/非在の虹
ガルシン
わたしの
針葉樹と広葉樹の原生林
広いみずうみに向かって吠えていた
あの人
暗い空から
いく筋もの垂れる塩 そのまま
丸太小屋に隠れる尻を出した男
その狭義の意味での家畜を
机の下で抱きしめる
ほのあたたかい決意を
自身に確かめながら
夕闇の射程をはかる
ほとんど 狂気の夕焼けがまずあって
それから徐々にテーブルのカップに
紅茶をたらそう。
ガルシン
病んでいる君
君って病気だったんだね
変なことばっかり言って
変なことばっかりやってた
おじさんの家にいっしょに行ったこと覚えてる?
おじさんも心配してた
でも きみ 笑ってたでしょ?
そのあと泣いていたね
君の病気はどうしたら治るの?
桜がこんなところにも咲いていた。
毎日通っていた道なのに
毎日見ていた木なのに
知らなかった
驚くばかりの花
花が群れてかたまりとなって
おもたく枝がたれている
いつの間に君は桜になったの?
誰にも告げずに どうして桜になったの?
ガルシン
わたしの行く道の彼方で
スキーですべっている。
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