それは詩か/オイタル
疲れ果ててしまった初老の男と
似たように疲れた女の
話を聞いてみることにした
それはとても
たわいのない話で
海苔せんべいをかじる間に
忘れてしまってもいい話である
それを
聞いてみた
話は見知った女の
行いと語り口とのいやらしさに関すること で
そこに
詩はあるのか と思う
そこにひとまずは 詩が
なぜかというと
詩は
空から降ってくるいくつもの言葉の列のことで
似たような女の忙しく振り回す首筋に
その言葉は降ってきたわけだから
それは詩だ
ということになるのである どうか
恋する少女の花と星降る夜の言葉と
昨日の職場のがまんできない湯沸かし薬缶の女のゆがむ口元と
その間に深く深く口を開けている汚泥の海
その海を掻きまわして
そこでウナギを
飼ってみるのである ウナギの
養殖は難しいようだけど
ウナギを ね
そこに詩があるのか
詩は
あるのか そう思いながら(あるわけないじゃん)
ゆっくりと 生ぬるくなった
ビールを流し込むのである
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