インセクトライフ/yo-yo
草の実は、苦くて酸っぱい。
子供の頃から、虫は好きだった。
うつむく生活を続けていたら、とうとう草むらの中に、顔を突っ込んでしまった。
緑色の空気がいっぱいだ。これで虫になれるかもしれない。そう思ったら手足が自由になった。
もう虫として生きるしかない。
ヒトのままで生きるには、夏は暑すぎる。冬は寒すぎる。ややこしいことが多すぎる。
まともにヒトらしくなんて、これまでもやってはこれなかった。これからもやれそうにはない。
いまは虫のほうが居ごこちがいい。不安定な日常でも、黙って埋没しておれる。
地べたを這っていく、草の中を潜っていく。道はないから、体を折りまげたり伸ばしたりして、虫
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