遠景/宮岡絵美
まっすぐに伸びた楡の根元に座って
視界に収まらない空を見ていた
眼球の限界―
やはり人間は限界のある生きものらしい
銀色の飛行機が頭上高くを過ぎる
遠ざかってゆく機影に憧れを写してみる
遠景として
それは私の感情のなかにある
いつかこの土地に来た
生まれた理由は果てしない筈だった
彼方に連なる山々の影は
ときにさすらうべきことを語っている
広がる大地に根を下ろし
ささやかな日々に生きることも
縺れ合う時は憧れに微かな輪郭を与え
この生の真価を見定める為に
私を問いかける人にする
それがあの日か
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