くちなしの詩/木屋 亞万
くちなしの花が咲く
つやつやとした葉の上に
やわらかい真っ白な花をつける
甘いにおいを漂わせながら
白は枯れていく気配をみせる
くちなしの私はもう
何も語ることができない
唇は血色を失って青く
しまいには白い二枚の花弁になる
喉は枯れ
耳も塞がり
目を閉じて
くちなしの私は
雨の中で匂う
私が死んでしまったら
棺をくちなしの花で満たしてください
「私は幸せです」という言葉もろともに燃えて
白い骨になりましょう
その白もやがては黄色く枯れて
花のように土へと帰りましょう
緑の丘に咲く星のように
一面の緑の中に白いアスタリスクが香る
軽やかなくちなしの
あの花のしあわせを胸に
私は眠ります
土の中に埋められた私は
空から降る雨に濡れて
惑星の欠片の小さな粒のまま
甘いにおいに包まれる
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