1敗1勝/salco
 
 七月     

プルトニウムの夏
音の無い朝
人の無い街を
私が歩いているのだとすれば
青い大気の海底を
もはや足に濃い影伴れて

日輪は黄金の鏡を向けて
絶対無関心の触手をばら撒き
仰ぎ見れば
白雲は宮殿の如く
行けば
風は手琴の音色の如く
見下ろせば
まどろむトマトの楚々と赤く

鳥の声とて無い今朝に
歩けど人影の一つ無く
幾万の家族を擁する街の家々は
日常の一切を秘めた棺の如く見え始め
秒針の一秒進む毎に
咲きほころぶ花弁のように眠りから覚めて行く、
動きと音のあれこれを送り出す、
時計の意味が失われた今
時の存在そのものが十万昔日の彼
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