簡単な話/プテラノドン
影を隠すために暗闇に身を隠すのは正しい。
では気持ちを落ち着かせたところで
上を見上げてみてはどうだろうか
ピンポン球のような穴から空が見えるだろう。
昼間、行き来する飛行機の数は数十機にも及ぶ話だ。
そして、西日に当たる機体は新幹線のそれよりも
輝いているというのは、見上げるという行為が
そうさせているだけのこと。雨が降り出したなら
新しい感情が芽生えるはずだ。何せよ、通りでは
腰の曲がった老婆が傘もささず雨に濡れながら
荷車を押して歩いているのだから。きみも僕も―家族以外、
手を差し伸べられそうにもない。苦痛とか犠牲を覚悟したって
そんなの無意味で、どう足掻こうが傘にな
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