水無月粒/木立 悟
縦に裂く指のひとつの行方には夕暮れのみの魚よこたわる
一歩めで柱二歩めで廊下燃し三歩で天地の境またぎゆく
「まとも」とは何を指すのかわからずにここまでは来たどこまでもゆく
ああ差異がコンクリートが斜め矢が汽笛も的も追い越してゆく
ぐるぐると匂いに妬いてうずくまる背の羽はぜて背の羽はぜて
そそぎつぐ緑の軌跡うわのそら飛沫しぶきゆく鈍たちのうた
父の死が父の時間を撓ませる槍よ遠くまで遠く遠くまで
五階から穴だらけの声差し出して海にそびえる狐ゆさぶる
あの日から音信不通の友たちよそのままで居ろいつか会えるだろ
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