祈りの在り処/寒雪
眠くなって
土の毛布を被り
静かに横たわるきみの
物言わぬ墓石の前で
祈りを捧げる
すっかり春が過ぎてしまって
もう暑いくらいで
着ていたシャツの袖を捲り上げて
それでも額ににじんだ汗を
手のひらで拭って
いろいろな言葉を綴りながら
きみに向かって祈る
別に神様を信じていないぼくが
きみの安寧を願って
せめて安らかにと
柄にもないことを口にするのは
たぶんきみのことを思って
そう念じているんじゃないんだ
きみは怒るかもしれないけど
それが生き残ってしまったぼくが
きみのことを心の奥底に
傷跡のようにいつまでも忘れないで
留めて置くための唯一の手段
この命が尽きるまで
救うためじゃなく
救われるために
ぼくは祈り続けるんだ
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