茄子味噌炒め/小原あき
今年初めての茄子が採れたので
お義父さんが好きだった
茄子味噌炒めを作ってみました
だけど、いつまでも残っています
冷蔵庫には
茄子一本分の茄子味噌炒めが
ぽつん、と
美味しくないのでしょうか
いいえ、思い出せば
茄子味噌炒めは
お義父さんだけの好物でした
人の死というものは
生きている人が感じるもので
わたしはそれを
茄子味噌炒めに投影します
茄子漬も
油炒めも
てんぷらも
だあれも食べないのです
だから今年は
茄子の苗は一本だけにしました
お盆用に生ってくれればと
その一本の苗から
つやつやとした茄子が
一本だけ
今年初めて採れたのです
一緒に植えた
ピーマンたちと
味噌で炒めました
茄子なんて嫌いだけれど
腐らせてしまうのももったいないので
鼻をつまんで食べました
ぽっかりと
茄子一本分の穴が
なぜだか心に
空いたような気がします
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