味わう時間/電灯虫
 
夕飯時の支度が始まる。
古新聞が敷かれる中で
温めた油に
手羽先を入れて揚げる。
バチバチいって油がはねるから
体を後ろに引き 
顔だけを出して覗き込んだ。
きつね色になって揚がった手羽先は
キッチンタオルに油を沁み込ませて
旨そうな味を匂わしてくれて
いつも想像で先に食べた。
すぐ横の台所では 
包丁がまな板の上で音をたてる。
朝と違って 夕時は
一日をある程度過ごして
気力も体力も減っちゃって
休み時間にしちゃうから
いつもの癖で
大人しく椅子に座ってられない。
みんなが帰ってくれば
狭い食卓を囲んで
箸がぶつかったり
迷ったり
肘を突いたり 

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