初夏(自動記述)/ぎよ
雪の降らない夜はない夏たちが僕の指を愛撫する季節、赤熱する月を前にして震え慄く昆虫の複眼に映っているのはあの女の青い瞳、合わせ鏡、朝の脳髄と夜の脳髄これらが出会うとき海はひび割れる、真実はどこにもなく瓶詰めにされた愛だけが波間を揺れている、僕は女の爪を滑り落ちていくガラスの靴に見とれているのだが、それに触れることができない、なぜなら風は孤独な氷河の欲望であるから、僕は僕のこめかみに銃口を向けゆっくりと引き金を引く、発射された虹が僕を絶命させる。
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