洞窟/刀
自分の還るべき場所を見つけた気になって安心できる。少なくとも、僕はそう感じている。自分の周囲にいる人々が、個々を敵と見なして踏みつけのし上がることこそが美徳と信じる世界なんてものは、僕は求めていなかった。けれど、それを求めなければ、僕は、存在意義を見失ってしまう。それが、それこそが、ただただ恐ろしかった。僕のこの疑問を口に出せば、「それこそが、この世界の構造であり、生き抜く術であり、慣れてしまえば楽なのだ。」と、友達は言う。その瞬間にその人は僕の友達でなくなってしまうのだ。退屈な日常に現実を見据え、自分の感覚鋭敏に磨いて、理想を現実にするのが正しいことだと僕は思っていた。いや、そしてそれを今もそう
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