洞窟/刀
気だるいようで心地良い。柔らかい何かに包まれて現実の厳しさから逃れられる場所。僕はそういうものが欲しかった。いつでもどこでも感じるのは下らない、吐き気がするような緊張を強いられる社会構造。休んでいることの出来ない日常。けれど、そんな日常こそが、幸せだと感じられる瞬間なのかもしれない。例えば昼でも、夜でも、どんな状況でも良い。雲が空を半分も覆い尽くしていたとしても構わない。後ろや下ばかり見つめていた視線をふと上げれば、空がそこにある。そのことに、ふっと気づけた瞬間がたまらなく愛しい。こんなものが自分の居場所だけれど、これこそが自分の居場所なのだと痛感させられる風景。そういう物を見られたときは、自分
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)