さくらぞめ/亜樹
愛で、心慰めるものなのであって、お話の中に出てくる作り物の情景には、どうやったってなりえないのだ。
「わかんないじゃないか、そんなの。ひょっとしたら、どこか遠い国に、墓標の代わりに桜の木を埋める様な国があるのかも知れない」
彼女があんまり可笑しそうに笑うものだから、僕は咄嗟にそんな思いもしていなかった出任せを口にした。それは全くの出任せでは有ったけど、言ってからそう悪くない案のように思えて、ちらりと彼女の方を伺う。目が合うと彼女もそう思ったらしく、くすりと笑った。
「素敵ね。それは素敵だわ。私、常々嫌だったのよ。自分が死んだ後、あんな冷たい石で重石をされるなんて。ねぇ琥太、そんな国本当にあ
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