お知らせ/salco
 
で「初めて笑った」と洩らされ、すぐ「五、六年ぶりじゃないか?笑った
の」と私に分かるよう言い直され、自分で自分に驚いているようなご様子
だった寸時を思い出します。それは同時に、それまでの「楽しい」は彼に
とって、相槌を打ち返答を連ねるだけの時間に過ぎなかった、という独白
のようにも受け取れました。
 私の「善意」なる矜持をくすぐってくれた、この「初めて」「何年ぶり
」という状況を作り出したのが悪かったのだ、と今は思っています。
 ご家族と医師、職場の所長さんによって保護されて来た日常、その弧絶
のサークルに、何の考えも知識もなく闖入して秩序を乱した自分の責を痛
感しています。私の
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