重々しい諦め/A道化
 



沢山の肌があって、沢山の息があって
電車の水疱まみれの窓硝子は、耐え切れず、つつ、と、壊れた
そしてまた、つつ、と、何度でも壊れた
沢山の肌があって、沢山の息があった
私わかっていたけれど
だからってどうしようもなかった


そして、沢山の傘があって、沢山の足があった、けれど
決して傘と足の林は床に刺さらず
心無い水溜りだけ溜めて、実は酷く軽々しく
軽々しく消えてしまうのだ
沢山の傘があって、沢山の足があっても
私わかっていた
だからってどうしようもなかった


ああ、
あらゆる硝子に眼を投げて投げて投げても、指のないところに指文字はなかった
気がついたら私いつのまにか人差し指を噛んでいて、ああこの痛みが
私のではなく誰かのものであればいいのにと願って願って願っても
私のあるところには、痛点があった


私わかっていたけれど
だからってどうしようもなかった
だからってどうしようもなかった
だからってどうしようもなかった



2003.11.11.
一年前からわたしは何も変わっていない気がするから

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