再確認/電灯虫
 
分厚い透明な壁を間に挟んで
僕と彼女は立つ。
一歩の歩幅分を半径として
必要最小限の灯りだけしか
他にはいない。
お互いだけ。
頷き 始めた。
視線を交わす。
胸の上下に動くのに合わせて
一緒に呼吸をする。
分厚い透明な壁越しに
左手を添え 右手を添える。
額を壁に付けて
目も閉じる。
数秒経って目を開ければ
また 視線を交換する。
僕から後ろに下がって
彼女も下がって
照らされた円の灯りの外に行く。
こっち側の暗闇は
光を中心に和らぐけれども
向こう側は見えない。
向こうの真っ暗闇が微動だにしないけど
僕は彼女を見ることをやめない。
暗闇も光も透明
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