本を買う/はだいろ
売ってしまったあとの空白がやっぱり、
部屋には残ってしまう。
そこが、
風俗の女を買うのとは違うところだ。
寄席へ落語を聞きにいくのとも違う。
本を買うということは、
恐ろしいことだ。
もしかしたら、
今日までの自分を刺し殺そうとする行為である。
それを望みながら、
得られない渇きの苦しみもある。
それでも、
ときどき、
本をどうしても、買いたくなる。
空を飛びたくなるきもちになるように。
ときどきでもないか。
毎日のことか。
大きく息を止めて、本を買うのだ。
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