本を買う/はだいろ
 

売ってしまったあとの空白がやっぱり、
部屋には残ってしまう。
そこが、
風俗の女を買うのとは違うところだ。
寄席へ落語を聞きにいくのとも違う。

本を買うということは、
恐ろしいことだ。
もしかしたら、
今日までの自分を刺し殺そうとする行為である。
それを望みながら、
得られない渇きの苦しみもある。

それでも、
ときどき、
本をどうしても、買いたくなる。
空を飛びたくなるきもちになるように。
ときどきでもないか。
毎日のことか。
大きく息を止めて、本を買うのだ。



戻る   Point(3)