夜の夏/電灯虫
押入れの年月を乱しつつ
奥からあの頃がつまった
プラスチックな衣装ケースを取り出す。
サイドの留めを外し
外気に飛び出た空気を嗅ぐ。
服の折り重なりに手を入れて探り
小さくたたまれた私だった浴衣を見つける。
ラジカセ越しの囃子音が
黄色い むきだしの光と一緒にやってくる。
焼そばがおいしくて
焼き鳥もおいしくて
たこ焼きだってフランクフルトだって
カキ氷だってリンゴ飴だって。
三百円ばかしのハズレなしのくじで
ゲーム機が欲しかった。
風船ダーツでも輪投げでも
ミニバスケットでも。
水風船が上手く取れなくて
金魚すくいなんて いわずもがな。
でもでも その時々の
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