洗練された人間関係について/しゅう
決まって朝には、互いに違う方向を向いて目覚めていた
僕は虚空で取りつかれたように現実を分解する
時計が鳴るまでは帰らなくていい
実際のところ、誰も眠ってなんかいないんだ
彼女は閉じた目で虚空を眺めていて、僕は見えないはずの視線を切り取る
衝突する車の鼻先が潰れていくスローモーション
僕の片腕は、彼女の下でゆっくりと空気を吐きだして、しぼんでいく
カリカリと壁をかきむしる指先から伝わる苦痛は、肘の断面で遮断される
真空に叩き落される音のように
自由を売りにしている青空が頭上に広がっている
そこに天井があっても無くても
透かした窓から初夏の匂いがする
ほんのりと入り込んだ光が視界のすべてに薄っすらと影をまとわせる
彼女は汗をかいている
正午のサイレンが鳴ったら、僕も目を開こう
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