カタツムリ/nonya
粘っこい足跡なんて
振り返りたくはないし
遠くへ行くつもりもないから
マイペースの匍匐前進
アンテナは柔らかいけれど
難しい言葉は受信できないし
とてつもなく臆病だから
ツノもヤリもすぐに引っ込めてしまう
見栄えのしない渦巻きの中には
他人にはとても言えない
得体の知れないものが
ぎっしり詰まっている
雨は嫌いじゃないし
ずぶ濡れになるのも悪くない
たまには雨の中で
ツノとヤリとアタマを
思いっ切り伸ばしてみたいけれど
無神経で無慈悲な指先に
掴まるのは御免だから
紫陽花の葉陰でひっそりと
雨の味と匂いを吟味しながら
梅雨空の向こう側を
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