小瓶/yumekyo
 
知り合いが 
旅行のお土産を見せてくれた 
腰のカーブが柔和で 
咲き誇る冬牡丹があでやかな 
九谷焼の小瓶だった 
手のひらに載るぐらいの小ささだけども 
存在感ははっとするほどで 
食卓の席に添えれば 
そっと上目遣いの 
うら若き麗人に見えそうだ 
かつて となりに
美しい女性(ひと)がいた 
北国の古都から 
京に紫の花を求めに来ていた 
7月8日生まれの女性だけが持つ 
激しい天空の逢瀬の残響としての 
眩い星の欠片が内面を照らした 
黒くしなやかな髪を下ろして 
輪郭のハッキリしたふたつの瞳から 
真っ直ぐで透明な光を放つ 
言葉を知らないわ
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