そんなやり取り/電灯虫
気になるあの子からもらった
角が二箇所内側に折られた
秘密のお知らせ。
開くのが惜しくて
放課後でもまだ読んでいない。
カラーのポールペンで
まるっこく書かれた ぼくは
色合い綺麗で
浮ついてる。
その手紙の有無で
隣のあいつより 幸せになっちゃう。
自宅の机でこっそり開いた
三行ばかりのあの子は
好きです とは言ってなくて
期待が先行しているから
どうにか解釈できないか
頑張ってみる。
返事をするために
言葉を探すけど
好きって書いたら噛み合わないし
そっけなく書くのもがっかりするし
滲む気持ちをどうしようか。
平安時代には
歌を贈り合って
二人の気持ちを確かめていたみたいで
まどろっこしいや
と 思ったけど
今になって分かりますし 尊敬します。
作品中の人でも
右手に光源氏が降りてくるのを待ちつつ
鉛筆のピストル音は鳴らずに
数回目の「次は書く」を繰り返す
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