枯れる/とろり
 
枯れたので、
私の臭いのダストボックスに捨てる。
ゆうぐれ、抱きしめられ
水槽のみなもとみなそこのはざま
男と女が居る。
慣れた時間に倦みはじめた
指で促していく。
(こえを、すこしだす)
服が脱がされて、
おなかから
祈りのようにあまくひろがる。
祈りは、願いを叶える為のプロセスではない。ほんの少しあまく、殖えてゆく複製されたうすさなのだ。風で送りだされる、指で孔をあけるように、深くまで吹かれる。
そのあとで
時間がちぎられて
いつもひとりになる。

(さびしさが片方足りない)

閉めかけた花屋で
売れのこりの薔薇を一輪もらう。
やさしい気持ちは
しぼみつつ、
私に帰路を急がせる。
えらばれなかったかたちが
無心をくれた。
私は安堵する。
つがいをもたないいきものは
すべての夏にとりのこされ
枯れることを祈り
孔を待ちわびる。
私の代わりなのね、
おまえは
だから枯れてしまえばいいのよ。
ちゃんと捨ててあげるからね。






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