公園のベッド/1486 106
公園に暮らす薄汚れたおじさんは
低い木の上にあるベッドで眠る
段ボールや衣類で組み立てた防壁
雨の日にはブルーシートの屋根を敷いて
公園に暮らす薄汚れたおじさんは
一日中ぼんやりと空を眺めている
帰る家が無いわけじゃないが
帰りを待つ人は誰もいない
いつも無表情で口数は多くない
それでも子ども達に優しさは伝わった
木の枝や小石で玩具を作り
沢山の遊びを教えてくれた
近くの住宅地で通り魔騒ぎ
疑われたのは公園のおじさん
子ども達は親に何か吹き込まれたのか
誰もおじさんの味方をしなかった
大人達は公園のベッドを取り囲み
狂ったように一斉に火を放った
隠していたお金や沢山の玩具
大切にしていた写真も全て燃え上がる
公園に暮らす薄汚れたおじさんは
追い出されるように姿を消した
思い出す人はいるかもしれないが
覚えている人は誰もいない
翌日通り魔は逮捕された
犯人は近くに住む若い教師
それでも大人達は誰一人として
おじさんを思い出そうとはしない
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