なみだ/塩崎みあき
 


小糠雨の止む
午前十時の
霧起つ街路では
弱い日光を
全身に溜めた
雨粒が
エレジーとともに
消える

無色透明の中の
一筋の色ガラス
たちの群れ

粒子のように渡る
鳥の声は
季節の断末魔だった

今まさに鋭い嘴で
割られ弾ける雨粒は
千々に
ばらばらに
なって
霧になって
人がいちばん欲しいものに
なって
どこか知らない
遠くに渡って行ってしまう

小川が一筋流れている
それに沿って
緑の濃い平原が広がる
白い小径が続いている
歩いてゆくと
赤い毛糸の
千切れた切れ端が落ちている
その脇の
草むらから
大きな
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