あまみずの 水化粧/yumekyo
 
ただ 紺 としか言いようのない色の 
ベニヤのようなうすっぺらい壁面の上に 
サビだらけのトタン屋根がふわりと乗っけられている 
建物そのものが 甘く針金で結わえられて 
地球の上に ふわりと乗っけられているようだ 
案内板も看板もなにひとつない 
ただ 洗いざらしの「氷」が風にたなびくだけの小さな小さな店 
買い食いなどさせなかった母が 
珍しく僕の手を引いて店に入れてくれた 
日が雲に翳ったとはいえ 盛夏の昼下がり 
僕が「カキ氷食べたい」という前に母がカキ氷をふたつ注文する 
しゃがれた婆ちゃんの手が 実にリズミカルに回る 
ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)