終わり1分前の情景/赤澤るろる
時計の針が進む音が僕の気持ちを急かしてくれることはない
街を行き交う人の群れの足音は、たとえ急いでいるのだとしても僕を焦らすことは不可能だ
あのサラリーマンが、どんなにイラついて、どうしようもない最中にいて、あんなにうるさくて迷惑な貧乏ゆすりを奏でているのだとしても、残念ながら僕の冷や汗一つかく材料にもなりはしない
じゃあこの僕の心臓の音は如何だろう
かつてない速さと音を刻んでいる
今まで僕の心臓は本気を出したことがなかったのか
やればできるじゃないか隠れた優等生君
しかしこれまた残念だ
どんなに心臓が騒いでも、脳ミソがシラを切ってるらしい
今度脳ミソにきつく説教しておく
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