お訪ね/電灯虫
 
ノブを捻りそのまま引いて ドアを開ける。
部屋の構成要素となっている 木の板が
傷の程度や 見て感じる古めかしさから
建物の築年数を 想像する。
建物に人は住んで居なさそう。
けど 脈を打ち続けているように 部屋は生きている。
だから 空気は温かい。


棚に収まっている本は 全て日記だった。
手に取った一冊は まだ幼くて
きゃっきゃっとした 楽しさで書かれていた。
背伸びして 上の棚から指先で落とした 別の一冊は
中途半端な時期で 斜め書きで
がんじがらめの理屈が 句読点を一杯打っていた。
一番 真新しいもう一冊は 机の上で休憩してる。


部屋の床は 足跡が
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