目が回る/乱太郎
月を飲み込んだ男がいた
そいつの腹は
まるまると膨らみ
あたかも臨月のようだった
太陽を抱きかかえた女がいた
激しい炎に
なんて温かいのだろう
と涼しい顔で言った
星を舐めている男の子がいた
甘くない
おいしくない
唾を夜空に飛ばすと
それに願いを掛けた女の子がいた
地球にへばりついた老婆がいた
どうしたのかと尋ねると
もう先は長くない
土に還るのだ
こころの準備をしておるところじゃ と
そんな人間たちを尻目に
月も太陽も星も地球も
くるくる回っている
先に倒れるのはどっちだ と
言わんばかりに
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