世界を共有する密林/真山義一郎
もう二度と行かないし
もう二度と帰って来ない
フェリーの二等客室に籠りっきりで
俺はずっとノートに言葉を書きつけていた
海の色はクリーム色
世界は脅威だ
俺の知っていることは
世界のほんの一部のほんの一面だけ
それは君についても
自分についても
俺の心の中に
めちゃ広い町が広がっていた
その風景のひとつひとつを
誰かに説明したい
だけど、話を聞いてくれるほど暇な人はいないし
話してもわかってもらえないだろう
第一、 どう話していいのか、自分でもわからない
だから、俺は詩を書くんだね
小説を書くんだね
ああ、そうだ
そうに違いない
なんて、思
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