万華鏡の風景/tomoaki.t
 


遥かの山の上空に
広漠な思念のような霞雲
体が浮いていると錯覚させられる
点在する緑の隙間に風の蛇腹が見える
季節という定位が不似合いだと言う
小さく分離した雲の無言
私は今はむしろ
曇った万華鏡のようなものであって
覗く者などもちろんいないが
ただむらのある反射に身を明け渡しているばかりで
同時にそのすぐ脇で
訳のわからない必要に駆られて言葉を並走させている
しばらくの間 大きな音が訪れないことを期待して
目に見える世界が 常に微細に振動しているのだと気づいた
気づいたように思えた
それは自分が振動しているからだろうと
自身の血液の震えを想像した
ぼんやりとした決して広くもない筒を覗くと
白色灯のように 遠くの雲だけが清冽に眩い



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