鍵と人/
 
けを繰り返して行くために、外へ出るべきなのだろうか。風は休むことを知らず、今日も一方的な挨拶を全ての人に送り届ける。


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 鍵穴は、いつまでも見つかることはない。繰り返し繰り返し、確信に満ちた声で誰かが歌っている。歌い手の姿は、どこにも見あたらない。「誰か」の姿は、いつだって見当たらない。


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 風に誘い出されるようにして、外へ出た。日曜の午後だった。知らない誰かの間をすり抜けて歩き、数少ない友人が住むマンションへ向かう。インターホンを鳴らすと、鍵の開く音がして、ドアの隙間から見慣れた笑顔が覗いた。それと同時にやはり、どこかで鍵が閉まる音が聞こえた。「その音」はストンと胃の中へ落下して、濁った輝きを放ちながら、反響を続ける。
 
 怪訝そうな友人の声が、遠くから聞こえる。笑って誤魔化しながら、私は部屋の中へ入っていく。「何か飲む?」と友人が言い、ドアを閉め、しっかりと鍵をかけるのが、背中越しに感じられた。


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