五月の童話/salco
南の男
慙愧の塩漬け
塩を汲みに塩湖へ踏み込んだ男は
深みに足を取られてずぶずぶ沈む
攣るほど力を入れ右足を持ち上げたが
反動でひっくり返ると
もがくほど結晶に沈んで行った
ひもじい女は近づく男を迎え
新しい夫は子を始末して
夜の香りと死を楽しんで生きた
塩湖の男はひりひりと塩水に侵されて死に
浸透圧で体液が滲み出た為に
脂肪が白蝋化して石鹸ほどに固くなり
腐りもせずに保存された
今は博物館のケイ素の中で
苦悶を留めて口を開け
勾縮の手指を茨さながら天に差し出し
絶息の一音を、まるで歌うようだ
北の女
簓(ささら){ル
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