パーソナルスペース/塩崎みあき
 
借りたてのアパートの
白い壁の
ざらざらした
感触に
うつろな視線を投げかけている
手のひら

からはじまる
小さいメソッド

何時間も壁ばかり見つめています
することがないので
実際はすべきことたくさんあります
でもみんな消えてゆくんです
ぷくぷく泡のようです

触ってもないけれど
壁のざらざらが
1ヶ月経つと丸くなる

アパートが
丸くなってゆく
家具たちは
人のシルエットに変わるとき
ベットは腰
本棚はひざ
机は腕
ごみばこは顔

手のひら切断されています
することがありませんから

ある人がある人のことを
無能だと思っている
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