代行/プテラノドン
風が止んだ夜中の駐車場で
代行タクシーが何台も止まっている。
夜露で濡れたフェンスと
見知らぬハンドルを握る手と。
酔っ払いの手によって
タイムズ出口の遮断機は
幾度となく悲鳴を上げ、その都度
ガムテープで巻かれたバーは短くなっていた。
遠巻きにパトカーが巡回しているが
誰も眼もくれない。夜ともなると
皆、頭上を見上げることに忙しいのだ。
最後の交差点。運転手は行く先を
男に訪ねたのだが、やっぱり鼻であしらわれた。
後部座席に投げっぱなしのギターは
真冬のように冷たかった。
そして二人は窓から入る田んぼの空気を嗅いだ。
どうやら夏に向かっているようだった。
空に浮かぶ雲は身動きが取れない。
それは運転手も同じ。後に引けやしない。
自らも矛盾の一部となる、その時まで。
戻る 編 削 Point(1)