★113 ボクノ、シシュウ/貴水 水海
 
あの人は悲しい人だった

公園のベンチで

名も無い詩人の詩集を読んでいた

落葉を栞代わりに挟んでいた


あの人は悲しい人だった

誤字脱字だらけの

名も無い詩人の詩集を燃やしていた

炎と煙が目にしみて泣いていた


その詩集は僕のだよ

僕のすべてをかけた詩集だよ

あの人だけには

ずっと持っていて欲しかった

僕の詩集

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