魔女の娘は/佐々宝砂
 
私の娘に出会ったら
どうか伝えておいてください
何一つ伝えるもの残すものはないのだと
ただそれだけを伝えてやってください

私が道のそこかしこに置いた石に
あのこが躓こうとも
教えられようとも
そんなこと私の知ったことではない

あやしげな石像に
どんな赤い花を供えたらいいかなど
決して教えてやらないでください
ひらひらとてのひらを動かして
口の中で唱える言葉など
ひとつたりとも教えてやらないでください

あのこの父親のことなど
教えるのはもってのほか

ほのめかしさえ禁じるべきです

幼いあのこは
やがてはこの冥い道をゆっくりと歩き出すのでしょうけれ
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