魔女の娘は/佐々宝砂
私の娘に出会ったら
どうか伝えておいてください
何一つ伝えるもの残すものはないのだと
ただそれだけを伝えてやってください
私が道のそこかしこに置いた石に
あのこが躓こうとも
教えられようとも
そんなこと私の知ったことではない
あやしげな石像に
どんな赤い花を供えたらいいかなど
決して教えてやらないでください
ひらひらとてのひらを動かして
口の中で唱える言葉など
ひとつたりとも教えてやらないでください
あのこの父親のことなど
教えるのはもってのほか
ほのめかしさえ禁じるべきです
幼いあのこは
やがてはこの冥い道をゆっくりと歩き出すのでしょうけれ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)