もじの魚たち/朧月
 
言葉には温度があって
軽々しかったり 重々しかったり
しらじらしかったりするという

かき言葉に
それだけの意味を私が込めたとして
どの線からもそれは滲んではこない

私の指から離れたとたん
それは見知らぬ文字となって
空気に泳いでゆく魚となる

半紙に向かう書道家のごとく
息をとめて書き下ろす言葉は
どこへいってしまおうとかまわない

いつか出あうそのとき
触れる言葉になにかを感じる
私の細胞を眠らせなければいいから




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