櫂を漕ぐ/電灯虫
 
地球に空いた穴から あまりに巨大な鯨が二頭
海面抜けて 縦に重なって飛んでいる。
キャンプに使うつもりだったカヌーに乗っている僕は
救命胴衣を付けて 海流に巻き込まれないように 逃げつつも
見たくて振り返るから 親に怒られる。


カヌーに乗ってる人から ボディーボードに乗ったつわものまで
僕ら以外の人も居て 鯨の周りを回遊している。
大きく跳ねた飛沫の量が多すぎて 瞬間的な大雨にさらされる。
大海の中で浮かんでいる カヌーが転覆しないように気をつける。
大きなうねりの中の細心の注意に 変な気持ちになる。


穴に落ちてるかのような世界の中 僕はリズムを崩さず櫂を漕ぐ。
[次のページ]
戻る   Point(3)